街路樹とは、市街地の道路の歩道や中央分離帯などに植えられた樹木のこと。市民の皆さんの生活の中に溶け込んでいる、いちばん身近な自然といえるかもしれません。街路樹には、森や緑地、庭園の樹木などとはちがった役割があること、その役割を果たすためにきちんと維持管理されていること、ご存知でしたか?緑のまちづくり協会の身近な自然を守る取り組みをご紹介します。
人間や動物にお医者さんが必要なように、植物にも適切な健康管理が必要です。特に街路樹は、本来の自然環境とは異なる都市部で生きているため、病気にかかりやすい傾向があります。管理をおろそかにすると枯死や倒木につながり、市街の景観や安全を損ねかねません。街路樹を健康に保つことは、快適な暮らしを守ることにもつながっています。
緑のまちづくり協会では、福岡市所管の街路樹の維持管理を行っています。毎朝みどり課長と街路樹係全員でミーティングを行い、各区の情報とその日の行動を共有します。
街路樹係では8名のうち4名が7区を分担して作業しています。担当者は市民や行政関係者などから情報を受けて現地調査を行い、監督として業者に委託の連絡を行います。
また、年に4回の受託者研修を行い、委託事業者への作業方法の確認や注意喚起などの指導も行っています。日々の細やかな作業が安全なまちづくりにつながっているのです。
路樹の維持管理の一環として実施しているのが「街路樹パトロール」です。
パトロール隊は3名1組で活動中。あらかじめ計画されたルートに沿って、約1か月をかけて福岡市全域を巡回します。
街路樹の生育状況をチェックし、結果を記録していきます。そのままでは危険な枯れ枝や道にせり出して繁っている枝などがあれば、その場で応急処理を行うことも。
緑のまちづくりを陰で支えるパトロール隊の活躍をご紹介します!
胴吹き(どうぶき)とは、幹の途中から新たに伸び出した枝のこと。上部の枝の生育を妨げるほか、通行の視界の妨げになり、街路樹の機能を阻害してしまいます。
今回は愛宕浜地区のオオシマザクラに発生した胴吹きを除去しました。
パトロール隊メンバーが除去作業を開始。みるみるうちに、本来の街路樹形に戻っていきます。
作業中、根元にキノコを発見。
キノコは街路樹の健康状況を教えてくれる重要なヒントです。見逃さずチェック。
除去した枝はきちんと回収。
作業の跡を残さないのも、緑の
まちづくりの影の立役者ならでは。
病気などにより内部が空洞になってしまった街路樹は、倒木の危険があります。
パトロール隊により空洞の兆候が報告された街路樹を樹木医が診断し、場合によっては樹木の撤去を判断します。
樹木のようすを撮影。樹皮に開いた穴の大きさを
チェック。他にも幹を叩いた音で、内部の空洞を調べます。
この日はパトロール隊に樹木医の職員が同行しました。
専用の機材で、内部の空洞を調査します。調査結果を診断し、空洞率が大きい樹木は撤去することに。緑のまちづくりに役立ってくれた街路樹の引退です。
実生木(みしょうぼく)とは、種から自然に発芽して生育した木のこと。本来なら管理されている街路樹ですが、鳥や風などが種を運んで、思わぬ場所で芽を出すことがあります。自然のチカラを感じさせてくれますが、景観の維持管理や安全のために除去が必要です。また、低木は基準の高さが定められています。大きくなった低木は適切に剪定を行います。
低木の中から、実生木が
にょっきり伸び出ています。
除去のかたわら、枝を片付け
パトロール隊メンバーが手際よく作業します。
低木や高木の枝の高さを
チェック。街路樹の大きさチェックは、福岡市全体の街路樹を適切に管理するはじめの一歩。パトロール隊の確認報告をもとに、高木を剪定する年次計画を修正しつつ剪定計画を策定していきます。
いつ落ちてくるかわからない大きな枯れ枝はとても危険。パトロール隊が応急処理を行います。
作業中は通行者・通行車両に配慮しながら、
慎重に。何よりも安全第一です。
高所の大きな枯れ枝除去は、経験豊富なスタッフだからできること。危ないな、と思う枯れ枝・折れ枝を見つけたら、緑のまちづくり協会へご連絡ください。
無事に枯れ枝除去完了!
ここでも、除去後の枝はきちんと回収します。
基準以上に繁った枝は、信号・道路標識などの視界の妨げや通行者に当たる可能性もあります。高さ確認を行い、場合によってはその場で除去します。
高さを確認して、除去作業開始!
ここでも胴吹き・実生木が見られたため、
あわせて除去しました。
秋には紅葉して美しい姿を見せてくれる落葉樹ですが、初冬には葉を落としてしまいます。街路樹の管理者も、 定期的な清掃のほかに落ち葉の時期には清掃回数を増やして対応していますが、すべての落ち葉を回収するには 時間と費用が足りないのが現状です。
福岡市や協会では、落葉などを回収する道路清掃を
行っています。ただ、清掃業務だけで、全ての路線を
常にきれいに保つことは難しいので、沿道にお住まい
の皆様にもご協力いただいて道路をきれいに保って
います。これからもきれいな道路を保つため、落ち葉
の清掃や植樹帯の管理にご協力をお願いいたします。
皆できれいな緑のまちづくりをしましょう。
また、企業様のスポンサーや市民の皆さんの力によって、街路樹植栽帯の空き用地に花壇を制作していただいています。街路樹に加え、花の彩りがまちの景観に大きく貢献しています。
ご協力ありがとうございます。
スポンサー花壇とは
街路樹は道路と生活空間のあいだのカーテンのようなもの。粉じんや騒音をやさしく遮ります。
日差しが厳しい夏季は、茂った枝葉が歩行者に木陰を提供します。また日射を遮るため、道路が高熱を持つことを防ぐ効果があります。
街路樹を道路の線形に沿って植えることで、ドライバーの視点からゆるやかなカーブなどが認識しやすくなります。 事故が起こったときは、街路樹がクッションになって衝撃を和らげる効果もあります。主に大きな道路で中央分離帯に植えられている低木の街路樹は、対向車のライトのまぶしさを抑えます。
いきいきと繁る街路樹は、その中に水分を蓄えているため火災が広がるのを防ぎます。特に、イチョウは火に強い性質があります。
まちなかの自然である街路樹は、野鳥や虫のオアシス。 季節を通して、さまざまな生き物を観察できます。
異なる外観の建物が並ぶ通りに、大きさ・品種をそろえた街路樹を植えることで、統一感と品格のある景観をつくり出します。またやさしい緑は、目にする人の心に安らぎをもたらします。
暮らしの中で何気なく目にする街路樹ですが、よく見れば個性豊か。歩くスピードを少し落として、街路樹のようすに目を配ってみると、いつもの通り道が少し楽しくなるかもしれませんね。
福岡市の代表的な街路樹6種のポイントをご紹介します。お近くの通りで、街路樹ウォッチングしてみてください!
街路樹として人気があり、福岡市にも「けやき通り」と親しまれる通りがあります。空に向かって大きく枝を広げる姿は、まるで天然の日傘のよう。葉の縁はノコギリの歯のようにギザギザしており、秋になるときれいに紅葉します。
日本の春の代名詞、サクラ。近年では、英語圏でも「sakura」と呼ばれることが多くなっているそうです。福岡の花どきは3月下旬から4月なかばにかけて、街の風景に文字通り花を添えてくれます。
幹も特徴的で、横筋のようにポツポツと皮目ができます。サクラの葉も縁はギザギザ。桜餅に使われるのはオオシマザクラの葉です。
日本の街路樹で一番多いのがイチョウです。黄金色に色づく秋のイチョウは存在感ばつぐん。扇を広げたような葉の形が特徴的で、覚えやすい樹木です。
年間を通して、緑の葉の中に赤い葉が混じるのが目印。幅は細いけれど肉厚な葉は、ぽってりした印象です。縦にちりめんじわのような筋が入る木肌が特徴。
光沢のある葉を一年中繁らせる常緑樹。市内の公園や街路樹によく見られるクロガネモチは、福岡市の木でもあります。雌雄異株で、メスの木は秋になるとたくさん赤い実をつけます。
ご神木とされていることも多いクスノキは、街路樹になっても独特の存在感があります。ノキシノブを着生させた姿はしっとりした風情がありますね。木肌は縦に大きく筋が入ります。
どこにどんな樹木があるのか、もっと知りたい方はこちら
緑のまちづくり協会街路樹係が協力し、緑を守る取り組み。いかがでしたか?
やさしい緑をもたらす街路樹の陰に、こんな取り組みがあることをご理解いただければ幸いです。