2014年10月21日
総務課
局地的豪雨が日本列島に激甚な災害をもたらした季節もようやく去りゆき、木々の彩りが日ごと秋の深まりを感じさせ、時の移ろう速さに戸惑いを覚える今日この頃です。
前回の福岡城址におけるヤマモガシ探索は見事な空振りで終わりましたが、それにも挫けず城を囲む土塁の樹林に知られざる珍木奇木が隠れていないものかよく考えたところ、約4年前に大濠公園との境で偶然見かけたクスドイゲというおどろおどろしい奇妙な樹木を思いつきました。
「舞鶴公園みどりのツアーガイド養成報告書」によると福岡城址周辺では三の丸東側と鴻臚館跡展示館南側に各々1本、大濠公園側に3本ほどクスノキやツバキ他の混生林にひっそりと生育していることが分かり、早速スタッフブログのためにスケジュールを調整し現地調査開始です。
・クスドイゲ:イイギリ科の常緑亜高木、別名トリトマラズ(鳥止まらず)、西日本の海岸に近い林内が生育地で、若木は幹や枝から枝の変化した鋭い大きな刺(草食動物からの摂食回避対策)を出し、生長すると刺の必要性が無くなり、また樹皮は縦に剥がれやすい特徴があります。
ひこ生えや枝の鋭い刺と成木の樹皮で簡単に見分けがつき、こんな都心部の目立つところでよくも伐採されず残っていたと、異様な樹形を飽きなく眺めながら妙に感心することしきりです。
幹周は1.70m、高さは12.0m、樹齢は福岡地方裁判所の歴史から138年余と推側しました。
クスドイゲ(コバノクスドイゲ)は環境省レッドリストの絶滅危惧IA類に指定されている希少木で、周りには異様な刺をもつ幼木も数本育っており樹高は0.5~2.0mです。
現在は見つかりません。クスドイゲの別名としている資料も見られます。
枝からの刺 幹に残った刺 満開の小さな花
※クスドイゲの和名は刺を意味する「イゲ」に付く「クスド」は「クサフ」が転訛したものと云われています。クサフ(草生)は草が生い茂る状況を表し、クサフノイゲがクスドイゲに変化、何となく分かるような気もしますが、樹木図鑑によると日本に生息しないハリネズミ?の古名「クサフ」に由来するとの説がほとんどを占めます。
開花直前 イソギンチャクの集合体? 開花状態
次の調査地点である鴻臚館跡展示館裏はクスノキ・ケヤキ・アラカシ・ツバキ等の混生林になっており、ここに根付くクスドイゲの幹周は1.10m、高さは10.0m、樹齢は90年前後と思われ、形状は独特で標示もなく知らない人が見たら何の木かと驚くでしょう。
鴻臚館跡展示館南側樹林 クスドイゲの樹形 特徴的な樹皮と刺
そして大濠公園との境を過去の記憶に辿りつつ歩くと幹から出た無数の大きな鋭い刺が目につきました。
ここではちょっとしたアクシデントが発生、というのは、苦も無く探した嬉しさのあまり刺に注意を払わず幹周を測ろうとしてメジャーを当てた途端、痛さで飛びあがる破目に陥り「Oh my Got!」と叫び、自分の迂闊さは棚に上げ「デンジャラスツリー、覚悟!」と憎き刺を剪定鋏で切断し溜飲を下げた次第です。
アラカシと共生 独特の刺その1 独特の刺その2
幹は根元で2分裂しており、幹周は1.35mと0.65m、樹高は8.0~9.0mでかなり大きく、その周囲には若木(樹高1.8~3.0m)が4本育っています。(ひこ生えの幼木も合わせ10本余確認しました)
さらに20m程離れた北側にも幹の3分裂したやや小さな1本があり幹周は0.94mで高さは6.0mです。
このようにクスドイゲが群生した有様はまさか希少種とは思われず、福岡県内では福岡城址が唯一の場所でしょう。(この近辺で探せばまだ生育している可能性が大と考えられます)
幹の形状 ひこ生えの群れ(高さ0.2~1.5m) 若木(高さ3.0m)
その後、福岡市近郊ではみやま市瀬高町に樹齢500年の古木が祀られていると判明しました。
次回(12月18日)はその文化財級のご神木を訪ねてみたいと思っています。
ブログ担当は十四度、総務課総務係のOld manでした。