環境問題が地球規模で取り組むべき問題として重視されている現在、利便性の追及だけでなく、自然と調和した快適で豊かな生活空間を創造することが重要になってきています。緑は、人が自然と共生していく基盤として都市に不可欠な社会資本、環境インフラの重要な要素です。
福岡市はこれまで、積極的に都市公園整備や公共施設、民有地の緑化推進に取り組んできました。しかし、緑はそれを上回るスピードで減少しています。私たちは、この時代に生きる市民の義務として、重要な社会資本である緑を保全・創造し、次世代に継承していかねばなりません。
緑は様々な役割を持っています。緑に求める役割が発揮できるよう、福岡市の都市の特性や都市づくりの視点を踏まえた緑の配置にしていく必要があります。福岡市が緑に求める役割には、主に次の6つがあります。
緑あふれるまち並みづくりの推進には、公園や街路など公共施設の緑化と共に、市民・企業による緑化や、組織的に取り組む地域緑化活動なども重要な要素になります。市民一人ひとりの緑への関心が高まり、参加・実践が増えることが緑あふれるまち並みづくりにつながります。
民有地の花や緑には、生垣や庭の花・木、ベランダの緑などがあり、良好な景観づくりに役立つことはもちろん、ヒートアイランド現象の緩和、雨水貯留効果など、様々な効果があります。
協会では、500㎡未満の建築敷地で生垣、壁面、屋上、駐車場などの緑化を行う方に対し、費用の一部を助成します。
緑のまちづくりには市民・企業による自主的な緑化の取り組みが大きな役割を果たします。
福岡市では、「市民・企業による主体的な緑のまちづくりを支えます」を基本方向のひとつとし、市民自身による主体的な緑のまちづくり、企業による緑を通じた社会貢献活動をさらに促進して、緑化の推進を進めています。
協会は、市民の皆さんで結成された団体が自主的に取り組む緑化活動を育成・支援するため、300㎡以上の樹林地などの保全管理を行う団体に対して地域の森づくり活動支援事業を、また10㎡以上の公共用地や空地などにおいて花壇づくりを行う団体に対して地域の花づくり活動支援事業を行っています。
福岡市は市民共働による緑のまちづくりを推進するため、花や緑に関する知識や技術を持ち、緑化活動に関心の高い方を「緑のコーディネーター」として養成・認定しています。得意分野毎に登録し、緑に関する指導やアドバイスを求める市民団体などへ紹介しています。
野生生物の生息地間をつなぐ、野生生物の移動に配慮した連続性のある緑地などの空間。生態系ネットワークなどとも言われる。
イギリス式園芸・庭園のこと。都会での暮らしを楽しみ潤いのあるものにするため、花や緑をデザイン的に演出する小道具として、熟年層が中心であった園芸から若年者の愛好家が増加し、ブームになっている。
地域住民と地域企業、行政が連携しながら展開する、身近な地域の環境づくりを進めるための環境改善活動。英国における都市環境を創造する民間団体「開発トラスト」が「生活現場(グラウンド)からの創造活動(ワーク)」をテーマとして始めた活動がきっかけとなったもので、わが国へも都市緑化基金が中心となった導入が図られてきている。
植物体内に吸収された水分が生育のために活用された後、葉あるいは茎から水蒸気として外界に排出されること。
ある地域に生息・生育する生物群集と、水や炭素、日光などの無機的な条件の両方と、それらの関係を含むシステムのことで、エコシステムとも言われる。生物や物質の存在だけでなく、食う・食われるの関係や日光をめぐっての競争などの生物同士の関わりや、植物が気温や降水量に影響を与えるなどの生物と環境の関わりなどを合わせていう。
生態系の多様性、生物種の多様性、種内の遺伝子の多様性という3つを併せて生物の多様性という。
「つながり」(食物連鎖や生態系のつながりなど、生きもの同士のつながりや世代を超えたいのちのつながり、あるいは日本と世界、地域と地域、水の循環などを通した大きなつながり)、「個性」(同じ種であっても、個体それぞれが少しずつ違うことや、それぞれの地域に特有の自然があり、それが地域の文化と結びついて地域に固有の風土を形成していること)と言い換えることもできる。
調査、計画、設計、施工、維持管理などの河川管理におけるすべての行為について、河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出するために、管理を行うこと。
地球の温度は、太陽から流れ込む日射熱と地球が宇宙に放出する熱とのバランスによって定まる。近年、人間活動により地球が放出する熱を吸収する性質を持った温室効果ガス(二酸化炭素など)の大気中の濃度が増加し、これにより地球の温度が上昇することが推測されている。気温の上昇は、海面の上昇の他、生態系や農業、漁業、水質源や大気、健康など、人間社会にも様々な影響を与えるものである。温室効果ガスの濃度が現在の増加率で推移すれば、2100年には地球全体の平均気温が1.8~4.0度上昇するとされている。
民有地の緑化を図るため、広く市民や民間企業などから募金などを募り、昭和60年に設立。(公財)福岡市緑のまちづくり協会がその運営にあたり、基金の運用益により、ふるさとの森づくりや民有地緑化の助成など、民有地の緑化を積極的に進める一方、募金活動や緑のまちづくり賞表彰などを通じて市民の緑化意識の向上に努めている。
広く市民や企業から寄付を募って、自然地や歴史的な建物を買い取る、または所有者からの寄贈を受けることにより守っていく活動。
「樹林・河川・農地・市街地・海岸などのさまざまな野生生物の生息・生育空間」または「人工的につくられた、野生生物の生息・生育空間」のことを指す。
都市活動におけるエネルギー消費の増大や緑地の減少などにより都市部の気温が上昇し、郊外に比べ高くなる現象。等温線を描くと温度の高い都心部が「島」のようになることから、ヒートアイランド(熱の島)と呼ばれる。