百道の春
風薫るさわやかな新緑の季節が到来し何となく心も和む今日この頃です。
(いつのまにか憂うつな花粉症と縁が切れて一年でもっとも落ち着ける時期と云えます)
さて、私が5年余勤める当協会本部事務所は福岡タワービルの2階にあり、1989年3月中旬から約半年間にわたり開催された「アジア太平洋博覧会」跡地の福岡タワー前広場(緑地)で、生長する木々の移ろいを、毎朝の出勤時に観察することがささやかな楽しみです。
インドの神々(西側) 福岡タワー展望 インドの神々(東側)
ここにはケヤキ・クロガネモチ・シマトネリコ・タブノキなどに混じり、希少木であるシナノキ(東西方向一対の2本)やヒトツバタゴ(同じく二対の4本)も植えられています。
・ヒトツバタゴ:モクセイ科の落葉高木(雌雄異株ですが雌花のみをつける株は存在しません、雄株・両性花異株)、和名は一つ葉タゴ、別名はナンジャモンジャノキ(その地方には珍しい樹種や巨木をさす呼称、一般的には本種をこの名で呼びます)、東アジアに自生し、日本では長崎県対馬、長野県南部・岐阜県・愛知県の木曽川流域に隔離分布する珍しい分布形態をとります。
シナノキ(西側) シナノキの花(昨年6月) シナノキ(東側)
ヒトツバタゴ(西側、幹周0.41m) ヒトツバダコの葉と花 ヒトツバタゴ(東側、幹周0.45m)
以前、シナノキはスタッフブログで2度紹介しましたが、ヒトツバタゴはとくに珍しくもない樹木で、百道においては某企業の敷地(百道2丁目)に15本植えられており、毎春、雪のような真っ白い花を咲かせ、皐月の空に映える彩りは一幅の絵を見るがごとき印象を受けます。
さらに、「よかトピア通り」のホークスタウンモール(地行浜2丁目)にも11本あり街路樹と見間違えるほどです。そういう状況でまさか希少種とは露ほども考えませんでした。
百道浜2丁目の景観その1 百道浜2丁目の景観その2 地行浜2丁目の景観
しかし、現在まで希少木を対象にブログを掲載してきましたが、新年度当初の職務多忙なときにそのゆとりはなくて、先週、偶々ヒトツバタゴの生態を詳しく調べた結果、環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類(VU)であり、極めて数が少ない自生地はいずれも国の天然記念物に指定されていると判明し、急遽、あちらこちら開花クライマックス写真を撮り廻ったしだいです。
この木は最近、街路樹として活用され、福岡市内においては明治通り(綱場町付近:補植)でケヤキのなかに6本程、アイランドシティ中央公園(香椎照葉)周囲で多数、東平尾公園でも1本見られます。(今回はアイランドシティへ行く時間がなくて残念でした)
明治通り(上川端町) 明治通り(店屋町) 明治通り(綱場町)
また、博多湾に面した百道浜西緑地では他の公園では見られないモクレン科の常緑小高木、バナナのような甘い芳香が特徴のバナナツリーとも呼ばれているカラタネオガタマも(2本)開花しました。この木は紅花品種もありベニバナカラタネオガタマ(別名はポートワイン)と呼ばれています。
カラタネオガタマの木 カラタネオガタマの花 ポートワイン
そして、白い花と対象的な真紅の花、福岡タワーに隣接する大きな病院(百道浜3丁目)の庭園で見られます。ご存じの方は多いでしょうが、とても風変わりな名のブラシノキ、花のユニークさは一度見たら忘れられません。その付近で咲く不思議なスモークツリーも同様に面白い樹木です。
ほかにも珍しいソヨゴ・カツラなどが植えられており、訪れる毎に目新しい趣きを認識できます。
・ブラシノキ:フトモモ科の常緑小高木、別名はカリステモン、花槙、金宝樹、オーストラリア原
産で観賞用に栽培され白花品種もあり庭木で植えられています。
・スモークツリー:ウルシ科の落葉小高木(雌雄異株)、別名は煙の木、霞の木,白熊(ヤクの尻尾で作られた払子のこと)の木など、アジア、南ヨーロッパ、アメリカ原産で日本へ明治時代初期に渡来しました。
ブラシノキ スモークツリー 花のコンチェルト
ソヨゴ エレガントなソヨゴの花 カツラ
春うらら、様々な樹木の花開く福岡タワー周辺の逍遥は如何でしょうか。
ブログ担当は十七度、総務課総務係のOldmanでした。
(なお、私の希少木をめぐるブログはこれで終わります)